こころ日記
与えると減る、という思い込み
人は時々、
「誰かに与えたら、自分の分が減る」
という感覚を持っています。
お金を使えば、
残高が減る。
自分が覚えてきた仕事を人に教えれば、
自分だけの強みが減る。
自分の顧客や仕事を後輩に渡せば、
自分の居場所が小さくなる。
確かに、
目に見えるものだけを見れば、
減ったように感じます。
でも人生は、
本当にそれだけなのでしょうか。
たとえば仕事。
長い年月をかけて、
自分なりに苦労しながら作ってきた仕事があります。
試行錯誤して、
失敗しながら覚えて、
ようやく身につけたもの。
それを後輩に教える時、
「自分はこんなに苦労したのに、
簡単に渡したくない」
という気持ちが出ることがあります。
でも、
そこで一度考えてみてほしいのです。
自分が持っているものを
誰にも渡さなければ、
その仕事はずっと自分のところで止まります。
一人分の力のままです。
反対に、
自分の経験や技術を誰かに渡せば、
その人がまた別の誰かを助けられるようになります。
一人の力が、
二人、三人へと広がっていきます。
これは「減った」のではありません。
広がったのです。
会社も同じです。
自分しかできない仕事を増やしていけば、
自分は忙しくなります。
でも会社は、
自分以上の大きさにはなれません。
人に任せる。
教える。
渡す。
任された人が育つ。
そこで初めて、
自分は次の役割へ進むことができます。
お金にも、
よく似たところがあります。
「使ったらなくなる」
そう思っていると、
お金は守るものだけになります。
もちろん、
無計画に使う必要はありません。
でも、
自分を成長させる学び。
身体を整えること。
仕事を良くするための投資。
新しい経験。
本当に必要なことまで、
「減るのが怖い」
という理由だけで止めてしまったら、
お金は残っても、
人生が動かなくなることがあります。
お金は、
残高だけで価値が決まるものではありません。
何に使ったかによって、
知識になったり、
経験になったり、
健康になったり、
仕事になったり、
誰かとのご縁になったりします。
数字としては減っても、
別の形になって自分に残ることがあります。
同じように、
仕事を人に渡しても、
自分の経験まで消えるわけではありません。
人に教えたからといって、
自分の価値が半分になるわけでもありません。
むしろ、
人に渡せるところまで来たということは、
自分がその場所を卒業して、
次へ進めるところまで来た、
ということでもあります。
「与えると減る」
という考え方で生きていると、
人はどうしても守りに入ります。
お金を守る。
仕事を守る。
立場を守る。
知識を守る。
そして、
守ることに力を使い続けます。
でも、
人生には循環という考え方があります。
自分が受け取ったものを、
次の人へ渡していく。
そうすると、
自分のところで止まっていたものが動き始めます。
私は、
人生が豊かになるということは、
たくさん持つことだけではないと思っています。
自分のところに来たものを、
必要な時に使い、
必要な人に渡し、
また次のものを受け取れる状態でいること。
それも一つの豊かさです。
今、
あなたが握りしめているものがあるなら、
一度考えてみてください。
「これは本当に守る必要があるものなのか」
それとも、
「渡したら自分が減ると思っているだけなのか」
与えることは、
自分を減らすことではありません。
自分の中にあるものを、
世の中へ広げていくことです。
そして不思議なことに、
人は何かを渡した時、
今まで持てなかった次のものを、
受け取れるようになります。
人生は、
握りしめることで広がるのではなく、
循環させることで広がっていくのです。




