「会社を辞めたい」
そう思いながら、何年も同じ会社に勤め続けている人がいます。
辞めたい理由はある。
仕事がつらい。
人間関係が苦しい。
本当は別のことをやってみたい。
それでも、
「辞めたら次の仕事が見つからないかもしれない」
「収入がなくなったらどうしよう」
「ここを辞めたら人生に失敗するかもしれない」
そんな思いが出てきて、結局その場所から動けなくなってしまう。
もしかすると、その原因のひとつには、心の中にある「観念」が関係しているのかもしれません。
私たちは子どもの頃から、知らず知らずのうちに、
「みんなと同じでいること」
を教えられてきました。
学校では、国語、数学、英語、理科、社会。
本当は音楽がものすごく好きでも、希望する学校へ進むためには英語や数学の点数も必要になります。
運動能力がとても優れていても、勉強もしなければ進めない学校があります。
もちろん基礎的な学力を身につけることには意味があります。
ただ、その一方で、
「平均から外れないこと」
を強く意識する環境の中で育ってきた人も多いのではないでしょうか。
ひとつのことに突出することより、
「みんなと同じくらいできること」
を求められてきた。
だから大人になってからも、
会社に入る。
毎月給料をもらう。
定年まで働く。
という一本のレールから外れることに、大きな恐怖を感じることがあります。
会社を辞めることが怖いのではなく、
「みんなと同じレールから外れること」
が怖いのかもしれません。
そして、そのレールから外れることを、
「人生の挫折」
だと心のどこかで感じている可能性もあります。
だから、
辞めたい会社を辞めることに恐怖を感じても、不思議ではありません。
では、自分は本当に今の会社が嫌いなのか。
それとも、ただ今の仕事や人間関係に疲れているだけなのか。
それを考える、ひとつの面白い方法があります。
会社のトイレを掃除してみる
僕はこれまで、コーチングに来られたクライアントに、
「会社のトイレを、一度こっそり掃除してみてください」
と伝えたことが何度もあります。
会社によっては、清掃を専門の方が行っているでしょう。
それでもいいのです。
一度、自分の手で会社の中でも特に「自分からは掃除したくない場所」を掃除してみる。
すると、不思議と今まで気にならなかったものが見えてくることがあります。
会社の入り口に落ちているタバコの吸い殻。
乱れている備品。
自分のデスクの周り。
誰かが出しっぱなしにしたもの。
今までなら目に入っていても、気にも留めなかったものが気になり始めます。
なぜでしょう。
僕はそこに、
「自分とその場所との関係」
が現れるように感じています。
たとえば、自宅のトイレを誰かに貸して、汚れていたとします。
多くの人は、そのままにはしておかないでしょう。
自分で掃除して、きれいにしたくなる。
なぜなら、
そこは自分が暮らしている場所だからです。
では、会社はどうでしょう。
一日のうち8時間、場合によってはそれ以上の時間を過ごす場所です。
それでも、
「汚れていても自分には関係ない」
「誰かが掃除すればいい」
と思ってしまうことがあります。
もちろん、それが良いとか悪いという話ではありません。
ここで見てほしいのは、
自分がその場所をどのくらい「自分の場所」として感じているのか
ということです。
会社を一からつくった経営者の中には、会社のトイレが汚れていたら、自分で掃除する人もいるでしょう。
「誰が汚したんだ」
と怒るより、自分で雑巾を持つ。
なぜなら、その会社に対して特別な思いがあるからです。
もちろん、すべての経営者がそうだという話ではありません。
ただ、
愛着のある場所には、自然と目が行き届く。
これはあると思います。
会社の入り口に吸い殻が落ちていたとき、
「あ、落ちているな」
で通り過ぎるのか。
それとも拾って捨てたくなるのか。
会社のトイレが汚れているとき、
「掃除の人がやればいい」
と思うのか。
それとも、
「ここは自分が毎日過ごしている場所だから、きれいにしておこう」
と思えるのか。
そこに、その会社に対する自分の気持ちが表れることがあります。
会社を辞めたいと思ったら、すぐに辞める必要もありません。
反対に、
「みんな我慢しているから」
という理由だけで居続ける必要もありません。
一度、自分の心を見てみる。
私は、この場所を嫌っているのか。
仕事が嫌なのか。
人間関係が嫌なのか。
それとも、
本当はもう次へ進みたいのに、レールから外れることを怖がっているだけなのか。
答えは、人によって違います。
だからこそ、自分自身で感じてみることが大切です。
もし今、
「会社を辞めたい」
と思っているなら。
一度だけ、誰にも言わずに職場のトイレを掃除してみてください。
そして、そのあと会社の中を見渡してみてください。
昨日までとは違うものが、目に入ってくるかもしれません。
最後に、自分にひとつだけ問いかけてみてください。
「私は、この職場を愛せていますか?」
その答えの中に、
これからの自分が進む方向を知るヒントがあるかもしれません。




